通知で中断されると作業に戻るまで何分かかるのか — 「23分15秒」の出どころを確かめた
- よく見る「23分15秒」という数字は、引用元とされる論文には載っていません。2006年のインタビュー記事が発端とされ、そこから独り歩きしています。
- 実際に論文で報告されているのは、中断された作業に戻るまで平均約25分、そして戻るまでに約2つの別作業が挟まるという観察結果です。
- この研究の本題は復帰時間ではなく作業の断片化でした。ひとつの作業に留まる時間は平均で約11分、そして作業の57%が中断されていました。
「23分15秒」はどこから来た数字なのか
秒単位まで書かれているため厳密な実測に見えますが、この数字が載っている論文は見つかっていません。2006年のインタビュー記事での発言が出発点とされています。
生産性の話題では「一度の通知で集中が途切れると、元の作業に戻るまで23分15秒かかる」という数字が繰り返し引用されます。秒まで刻まれているので、どこかで精密に測られたように見えます。
ところが、この数字の出典としてよく挙げられる複数の論文を確認しても、23分15秒という数値そのものは出てきません。発端は2006年に研究者へ行われたインタビュー記事だとされ、そこから引用が引用を呼ぶ形で広まったと考えられています。
数字が細かいほど信用されやすいというのは、情報の伝わり方としてよくある現象です。秒単位の精度は、根拠の強さとは関係がありません。
論文に実際に書かれている数字は何か
2005年に発表された観察研究では、情報労働者24人の作業を追跡し、中断からの復帰は平均約25分、間に約2つの別作業が挟まると報告されています。
| 項目 | 報告されている値 |
|---|---|
| ひとつの作業に留まる時間 | 平均 約11分 |
| 中断される作業の割合 | 57% |
| 中断された作業に戻るまでの時間 | 平均 約25分 |
| 戻るまでに挟まる別の作業 | 約2つ |
広まっている「23分15秒」と、論文の「約25分」。差は2分足らずですが、前者は出典が確認できず、後者は査読を経た論文に載っているという点で、扱いはまったく違います。
なぜ戻るまでにそれほど時間がかかるのか
中断された直後に元の作業へ戻るわけではないからです。間に平均2つの別作業が挟まり、その分だけ復帰が遅れます。
通知が来て、返信する。返信のついでに別のメッセージが目に入り、そちらも処理する。その流れで思い出した用事を片付ける。ここまで済んでから、ようやく元の作業に戻る。25分という数字は、この連鎖の合計であって、頭が切り替わるのに25分かかるという意味ではありません。
ここが実務上は重要です。もし「集中の回復に25分かかる」のなら打つ手は限られますが、実態が連鎖なら、連鎖を断てば短くできます。
この数字を自分に当てはめてよいのか
慎重に扱う必要があります。2005年の研究は24人を対象にした観察で、当時の職場環境が前提です。
- 人数が少ない:24人の情報労働者を観察した研究です。
- 20年前の環境:スマートフォンもチャットツールも今とは違う時代の観察です。中断の頻度も種類も変化しています。
- 観察研究である:中断が原因で遅れたのか、もともと分断されやすい仕事だったのかを、この設計では切り分けられません。
- 平均値である:作業の種類によってばらつきは大きく、全員が毎回25分かかるわけではありません。
それでも「作業の半分以上が中断され、戻るまでに別の作業が挟まる」という構造の指摘は、今でも実感と合います。数字を暗記するより、この構造を押さえるほうが役に立ちます。
中断を減らすには何から手をつけるか
復帰時間を短くしようとするより、連鎖の入口を減らすほうが効きます。順番を決めて上から処理します。
- 音を止める:視界と違って、音は避けようがありません。効果がいちばん大きいのはここです。
- 画面上の表示を消す:バッジの数字は、開く理由を作り続けます。
- 連鎖しやすいアプリから切る:ひとつ開くと次が始まる種類のものを優先します。
- 戻る場所を書いておく:中断されるときに「次にやること」を1行残しておくと、連鎖を経ても戻る先が残ります。
物理的な配置で中断を減らす方法は机の上にスマホを置くとなぜ集中できないのかで整理しています。
よくある質問
「23分15秒」は嘘ということですか?
嘘と断定するのも正確ではありません。出典が確認できないというのが現状です。近い値である約25分は論文に載っているので、数字の桁が大きく外れているわけではありません。ただし秒単位の精度を持った実測値として引用するのは適切ではありません。
1回通知を見ると25分無駄になるのですか?
違います。25分は「元の作業に戻るまでの時間」で、その間は別の作業をしています。何もできない時間が25分あるわけではありません。
通知を全部切ればいいのですか?
全部切ると不安になって、かえって自分から確認しに行く回数が増えることがあります。通知を許可するものを先に決めて、それ以外を切るほうが実務的です。
自分で見に行く中断はどう扱えばいいですか?
2005年の研究では、中断には外から来るものと自分で始めるものの両方が含まれています。通知を止めても自分から見に行く分は残るので、端末を手の届かない位置に置くなど、物理的な対処と組み合わせる必要があります。
出典
- Mark, G., González, V. M., & Harris, J. (2005) "No Task Left Behind? Examining the Nature of Fragmented Work", CHI 2005, 論文PDF(UC Irvine)
- 「23分15秒」の出典に関する検証: Interruptions cost 23 minutes 15 seconds, right?
本コラムは公開されている研究の紹介と整理であり、医学的・心理学的な診断や助言ではありません。
最終更新: 2026年9月8日